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まるまるこふこふ

数々の次元が崩壊し、全ての生命が塵と化すのを見てきた。私ほどの闇の心の持ち主でも、そこには何の喜びも無かった。

支配の三類型とレミリア・スカーレット

東方プロジェクトというゲームにレミリア・スカーレットというキャラクターが出てくる。

レミリア by Fori on pixiv

レミリア・スカーレット (れみりあすかーれっと)とは【ピクシブ百科事典】

東方紅魔郷の舞台、紅魔館の主である。
約500年以上の歳月を生きてきた吸血鬼の少女。フランドール・スカーレットという5歳下の妹がいる。
吸血鬼としては少食で、人間から多量の血が吸えない。また、吸い切れない血液をこぼして服を真っ赤に染めるため「スカーレットデビル(紅い悪魔)」と呼ばれている。

作中ではカリスマ扱いされている。

カリスマ……?


しゃがみガード by HAM on pixiv


うー☆


いや東方プロジェクトの二次創作、果ては原作の続編においてまで彼女がカリスマブレイク*1していることは既にファンの間では周知の事実だが、そもそも初登場である東方紅魔郷ですら、僕の思うカリスマ像とはズレていて違和感を感じた。

見た目10歳の幼女なのは、そういう世界観なので差し引くとして、彼女の性格は、

・傲慢
・ワガママ
・飽きっぽい
・気紛れ

とまるでカリスマ性がない。こんな性格では麻原彰晃あるいはアドルフ・ヒットラーのように人を支配し動かすことは不可能なのではないか。

実際に作中でも、彼女が人と共同行動する際は、「気まぐれな主人とそれに付き合わされる取り巻き」として描かれ、煽動される大衆のような描写はまったく描かれない*2

ただまあ彼女のカリスマ性については「彼女のカリスマは彼女の人格ではなく、吸血鬼に対する畏怖である。」*3「本質は他の妖怪が1000年かかっても届かないような圧倒的な力である。」*4という解釈がファンによってなされている。そもそもカリスマって言葉の定義が云々~だからその定義によると彼女はカリスマ云々~ってロジックだ。

確かに僕は「カリスマ」ってワードをぼんやりとしたイメージでしか掴んでおらず、カリスマとは何なのか真剣に考えたことは無かった。

というわけで前置きが長くなったが、社会学マックス・ウェーバーの著書「権力と支配」を読んで、カリスマとは何なのか、そしてレミリア・スカーレットのどこにカリスマ性があるのか紐解いて行きたいと思う。

支配の三類型

「権力と支配」はタイトルの通り、支配に関する政治学の本である。
著書内では支配は三つの類型に分類されている。

・合法的支配
・伝統的支配
・カリスマ的支配

合法的支配においては支配者の正当性は法律等のルールによって支えられる。首相や大統領等が支配者の例として挙げられる。伝統的支配においては、支配者の正当性は伝統の神聖性にたいする信仰によって支えられる。家系が代々村を治めてきた村長などが例として挙げられる。そしてカリスマ的支配とは情動的帰依によって支えられる。超自然的または超人間的な能力(非日常的な力)を持った人物が、指導者として支配の正当性を確立する。

超自然的あるいは超人間的能力とは何か。おおよその人間では持ち得ない才能や能力といった実質的なもの、あるいは神の声を聞いたりできるといった名目的なものが挙げられる。これらは支配者が実際に能力を持っているかどうかは問題ではなく、肝心なのは非支配者から見て能力が評価されるかどうかという点である。つまり、支配者はマスメディア等を通して自己の能力を誇張する事で、カリスマを増幅させることができる。

カリスマ的支配

つまりカリスマ的支配とは「支配者の超人的能力を」「非支配者が承認し」「支配者が自分に利益をもたらすと信頼を寄せた」時に成立する。

話を戻して、この3点をレミリア・スカーレットが持ちうるか考える。

・支配者の超人的能力
レミリア・スカーレットは吸血鬼の種族である。作中では「吸血鬼は鬼のパワーと天狗のスピードを併せ持ち、大量の悪魔を一声で召還する魔力に、頭以外なら全身の再生を一晩で出来る再生能力を全て併せ持つ最強の種族」と書かれている*5。さらにレミリア・スカーレット個人について言えば、「運命を操る程度の能力」も持っている*6。超人的能力については問題なさそうだ。戦闘力の大小が重要な世界感の中で、ちゃんと戦闘力を持っているし、さらにいえば魔術めいた能力も持っている。

・非支配者の承認
これも問題なさそうだ。作中の世界でレミリア・スカーレットは最強ではないが、上位に存在する力を備えており、
それは彼女の部下、取り巻き、敵ともに認めている。もちろんそうした世界を覗き込む我々東方プロジェクトのファンも、彼女の力については認めている。

・支配者が非支配者に利益を持たらす
ない。残念ながら作中にはこのような描写は見られなかった。先程も述べたが、レミリア・スカーレットの性格は「傲慢」「ワガママ」「飽きっぽい」「気紛れ」とまるで他人に利益を与えるような性格ではない。その超人的な能力が人の役に立っていれば良いのだが、作中の彼女の部下や取り巻きもそれなりに力があるので、彼女の能力を必要としている描写はない。「運命を操る程度の能力」に至っては作中でそれを使ったところをまだ見たことがない。

血統カリスマ

「権力と支配」では、カリスマ的支配の存続について述べられている。そこでは「カリスマが血統上の資格であり、それゆえ近親者の身にも備わっているという観念を持ち込むことで、カリスマ的支配を委譲することができる。」と書かれており、これを血統カリスマと呼ぶ。こうしたカリスマの相続が行われると、信仰の重点は個人のカリスマ的資質におかれなくなり、相続制度上に正当化される。

レミリア・スカーレットのカリスマは血統カリスマであるという説明は納得がいく。つまり彼女が吸血鬼であり、その血統にはカリスマが付随しているので、彼女はカリスマであるというわけだ。ただし彼女のカリスマをこの言葉で説明するならば、カリスマ性はあくまで吸血鬼自体にあって、彼女自身がカリスマ性を持つわけではない。

まとめ

血統カリスマについて考えればレミリア・スカーレットはカリスマを持っていると言える。ただしそれはあくまで彼女の先祖がカリスマを持っていただけで、彼女はそれを相続したに過ぎない。彼女自身がカリスマ性を持つには、「支配者が非支配者に利益を持たらす」という描写が作中には足りない。彼女が持ち前の力あるいは能力を使う事で、部下あるいは取り巻きが有利になる描写が増えれば、彼女自身がカリスマを持つ事になるだろう。

*1:カリスマがなくなること。いわゆるその辺の萌えキャラっぽい仕草を行うこと

*2:主に東方儚月抄

*3:レミリア・スカーレット (れみりあすかーれっと)とは【ピクシブ百科事典】

*4:レミリア・スカーレットとは (レミリアスカーレットとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*5:東方求聞史紀

*6:具体的にどういう能力なのかは作中で明らかにされていない